
白い杖を持って歩いている人を見かけたことはありませんか?
皆さんは、街中や駅、バスなどの公共交通機関で、白い杖を持って歩いている人を見かけたことはありませんか?
その白い杖は「白杖(はくじょう)」と呼ばれるものです。
白杖を見かけると、「何か手伝えることはないかな」「困っているなら助けてあげたい」と感じる方もいるかもしれません。
その気持ちは、とても大切なものです。
しかし、私たちが良かれと思って行動したことが、本当に相手の望む支援になっているのでしょうか。
今回は、白杖とは何か、どのような人が使っているのか、そして白杖を持つ人を見かけたときに私たちができる配慮について考えてみたいと思います。
白杖とは?どのような役割があるの?
白杖とは、主に視覚に障がいのある人が、周囲の状況を確認しながら安全に歩くために使用する白い杖状の道具です。
歩道の段差や障害物、路面の状態などを確認したり、周囲に自分の視覚に障がいがあることを知らせたりする役割があります。
白杖の先端で地面を確認しながら歩くことで、目から得られる情報だけに頼らず、周囲の状況を把握しやすくなります。
また、白杖には、周囲の人に視覚に障がいがあることを伝える役割もあります。
ただし、白杖があれば、あらゆる危険を完全に把握できるわけではありません。歩行環境や本人の見え方によって、必要な情報や支援は異なります。
白杖は、視覚に障がいのある人が自分で周囲を確認しながら移動するための、大切な道具なのです。
白杖を使うのはどのような人?
白杖を使う人というと、まったく目が見えない人を想像する方もいるかもしれません。
しかし、視覚の状態は人によってさまざまです。
例えば、次のような人が白杖を使用することがあります。
– 全盲の人: 視覚から得られる情報がほとんど、またはまったくない人
– 弱視の人: 見える範囲が狭い、ぼやけて見える、明るさによって見えにくいなど、見え方に困難がある人
– 視野が狭い人: 正面は見えていても、周囲の人や物に気づきにくいことがある人
– 光のまぶしさなどで見えにくさがある人: 明るい場所と暗い場所の移動などで、周囲を把握しづらい人
このほかにも、病気やけがなどによって視覚に変化が生じ、白杖を使う人もいます。
白杖を使っているからといって、必ずしも何も見えていないわけではありません。
反対に、外見だけでは分かりにくい見えづらさを抱えている人もいます。
見え方は一人ひとり違う。 まずは、そのことを知っておくことが大切です。
白杖を持つ人を見かけたら、どうすればいい?
街中や駅などで白杖を持つ人を見かけたとき、「何か手伝ったほうがいいのかな」と迷うことがあるかもしれません。
もちろん、困っている人に手を差し伸べようとする気持ちは大切です。
ただし、白杖を持っている人が、いつでも誰かの助けを必要としているとは限りません。
自分で周囲を確認し、目的地まで移動しようとしている場合もあります。
もし困っているように見えたり、支援が必要なのか気になったりした場合は、まず言葉で声を掛けてみましょう。
例えば、
「何かお手伝いできることはありますか?」
と尋ねるだけでも、相手が必要としていることを確認するきっかけになります。
大切なのは、相手の状況をこちらだけで判断せず、本人の意思を確認することです。
私たちの「優しさ」は、本当に相手のためになっているのか?
ここで、少し考えてみたいことがあります。
それは、私たちが優しさだと思っている行動が、必ずしも相手の望む支援になるとは限らないということです。
例えば、白杖を持つ人が駅の構内を歩いているとします。
「危ないから案内してあげよう」と思い、本人に確認せず、手を引いて別の方向へ誘導したとしたらどうでしょうか。
その人は、いつもの道順や、周囲の音、足元の感触などを頼りに、自分がどこにいるのかを把握しながら歩いていたのかもしれません。
あるいは、目的地までの道を自分で確認し、移動すること自体が、その人にとって大切な生活の一部なのかもしれません。
こちらが良かれと思って案内した場所が、本人にとって馴染みのない場所だったら?
目印にしていたものが変わり、自分の現在地が分からなくなってしまったら?
安全のために行ったはずの行動が、かえって不安や混乱につながってしまう可能性もあります。
もちろん、実際に危険が迫っている場合など、すぐに対応したほうがよい場面もあります。
しかし、そうでない場合は、まず本人の意思を確認することが大切です。
助けることだけが優しさではありません。本人が自分でできることを尊重し、必要なときに必要な支援を届けることも、優しさのひとつなのではないでしょうか。
白杖を持つ人を支援するときに意識したい3つのこと
1.まずは声を掛け、本人の希望を確認する
困っているように見えても、どのような支援を必要としているかは、本人にしか分からないことがあります。
「お手伝いしましょうか?」と声を掛け、相手の返答を待ちましょう。
支援を必要としていない場合は、その意思を尊重することも大切です。
2.いきなり身体や白杖に触れない
突然身体に触れたり、白杖をつかんだりすると、驚かせてしまうことがあります。
誘導が必要な場合も、本人の同意を得てから、どのように手助けすればよいか確認しましょう。
一般的には、本人に誘導する人の肘や肩などを持ってもらう方法がありますが、どの方法がよいかは本人の希望や状況に合わせることが大切です。
3.目的地だけでなく、本人にとって分かりやすい案内を考える
「こちらです」とだけ伝えたり、本人の希望を確認せずに移動させたりするのではなく、必要に応じて、進む方向や周囲の状況を具体的な言葉で説明しましょう。
例えば、「右側に階段があります」「あと数歩で段差があります」といった情報は、周囲の状況を把握する助けになります。
また、本人にとって馴染みのある道順や目印がある場合もあります。どのような案内が分かりやすいかを確認しながら支援することが大切です。
私たちが大切にしたいのは、相手の意思を尊重すること
白杖について知ることは、視覚に障がいのある人の生活を知るきっかけになります。
しかし、知識を身につけるだけでは、相手にとって本当に必要な支援ができるとは限りません。
大切なのは、目の前の人を「助けてあげる対象」としてだけ見るのではなく、自分と同じように意思や希望を持ち、自分の生活を送っている一人の人として向き合うことです。
私たちが良かれと思って行動するときこそ、「これは本当に相手が望んでいることだろうか?」と、一度立ち止まって考えてみる。
そして、本人の希望を聞き、その人に合った方法で支援する。
そんな小さな意識の積み重ねが、誰もが安心して外出できる社会につながっていくのではないでしょうか。
彩(irodori)から
私たち訪問介護事業所 彩(irodori)は、豊中市を中心に、池田市・箕面市などの地域でも、障がい福祉サービスや移動支援を通じて、一人ひとりの生活や外出を支えています。
支援の方法は、利用者さんによって異なります。
同じ声掛けでも安心できる人もいれば、自分で取り組む時間を大切にしたい人もいます。だからこそ、私たちも一人ひとりの意思や希望を確認しながら、その人に合った支援を考えることを大切にしています。
白杖について知ることが、視覚に障がいのある人の外出や暮らしに目を向けるきっかけになればうれしいです。
誰かを思いやる気持ちを、相手が本当に必要としている支援につなげていく。
これからも彩(irodori)は、豊中市・池田市・箕面市の地域で、一人ひとりの思いを尊重した支援を大切にしていきます。
