
多目的トイレは車椅子の人だけが使うもの?訪問介護・移動支援の現場から考える必要性
駅や商業施設、公共施設などで見かける「多目的トイレ」。
車椅子マークが表示されていることも多く、「車椅子を利用する人のためのトイレ」というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。
もちろん、車椅子を利用する人にとって大切な設備ですが、多目的トイレを必要としているのは、それだけではありません。
障がいのある人や、排泄に介助が必要な人、オストメイトの方など、さまざまな事情から一般的なトイレでは対応が難しい人にとって、欠かせない場所でもあります。
今回は、多目的トイレの役割や利用する人について解説するとともに、私たち訪問介護・移動支援の現場で感じる大切さについても紹介します。
多目的トイレとは?
多目的トイレとは、一般的なトイレを利用することが難しい人にも配慮し、さまざまな設備を備えたトイレのことです。
施設によっては「多機能トイレ」「だれでもトイレ」など、異なる名称で案内されている場合もあります。
設置されている設備は施設によって異なりますが、例えば次のようなものがあります。
– 車椅子でも出入りしやすい広いスペース
– 車椅子から便座へ移る際などに使用する手すり
– オストメイト対応設備
– おむつ交換台
– 介助者と一緒に利用できるスペース
– 大きなベッドなどの介助用設備
すべての多目的トイレに、これらの設備がそろっているわけではありません。
利用する人の身体状況や必要な介助、排泄に関する事情などによって、必要な設備は異なります。
多目的トイレはどのような人が利用するの?
1.車椅子を利用する人
車椅子を利用する人にとって、トイレの出入口の幅や室内の広さは重要です。
一般的なトイレでは、車椅子で入れなかったり、便座への移乗や方向転換が難しかったりする場合があります。
広いスペースや手すりがあることで、本人の動作や必要な介助に対応しやすくなります。
2.身体に障がいがあり、介助が必要な人
手足を動かすことが難しい人や、姿勢を保つことが難しい人なども、多目的トイレを必要とする場合があります。
また、排泄の際に介助者のサポートが必要な人にとっては、本人と介助者が一緒に入れる広さも大切です。
3.オストメイトの人
オストメイトとは、手術によってお腹にストーマと呼ばれる排泄口を造設した人のことです。
外出先でもストーマ装具の管理や洗浄などが必要になる場合があり、そのための設備が整ったトイレが重要になります。
オストメイト対応設備については、前回の記事「オストメイトマークとは?」でも詳しく紹介しています。
4.排泄や着替えに大きなスペースが必要な人
障がいのある子どもや大人の中には、排泄やおむつ交換、着替えなどの際に、大きなベッドや介助用の設備を必要とする人もいます。
一般的なおむつ交換台では身体の大きさに対応できなかったり、床での介助が難しかったりすることもあります。
こうした人たちにとって、必要な設備が整ったトイレは、安心して外出するための大切な環境です。
5.トイレに行きたいことをすぐに伝えるのが難しい人
トイレを必要とする理由は、身体的な事情だけではありません。
例えば、トイレに行きたいと感じても、すぐに言葉で伝えることが難しい人もいます。
周囲への伝え方やタイミングは一人ひとり異なります。支援者が適宜声を掛けていても、本人がギリギリまで伝えられないこともあります。
また、慣れた場所でなければ安心してトイレを利用できない人もいます。
このような場合、単に「空いているトイレを使えばいい」とは限りません。本人の特性や気持ちに配慮しながら、安心して利用できる環境を確保することが大切です。
移動支援の現場で感じる、多目的トイレの大切さ
私たち訪問介護事業所 彩(irodori)では、障がい福祉サービスや移動支援を通じて、利用者さんの日常生活や外出を支えています。
その中で、多目的トイレの大切さを実感する場面があります。
外出中は、利用者さんがトイレに行きたいタイミングを把握できるよう、適宜声掛けを行い、失敗を防げるように支援しています。
しかし、利用者さんによっては、トイレに行きたいことをギリギリまで伝えられないことがあります。
そんなとき、目的の多目的トイレが使用中であれば、少し離れた場所にあるトイレまで移動しなければならないこともあります。
また、利用者さんによっては、慣れた場所やいつも利用しているトイレに安心感を持っていることもあります。その場合は、別のトイレへ移動することが難しく、空くまで待つこともあります。
もちろん、トイレを利用するタイミングや、安心できる環境は人それぞれです。
だからこそ、必要なときに必要なトイレを利用できることが、外出中の安心につながります。
多目的トイレを長時間利用できないと、困る人がいる
多目的トイレは室内が広く、設備が整っていることから、一般的なトイレよりも使いやすいと感じる人もいるかもしれません。
実際に、一般的なトイレが汚れていたり、使いにくかったりすると、多目的トイレを利用したくなることもあると思います。
しかし、私たちが支援の現場で感じるのは、多目的トイレが空いていないことで、困ってしまう人がいるということです。
例えば、利用者さんがすぐにトイレを必要としているときに、多目的トイレが使用中で、なかなか空かないことがあります。
中には、イヤホンをして携帯ゲームをするなど、トイレ以外の目的も含めて長時間利用されているように見える場面もあります。
もちろん、外からは利用者の事情が分からず、長く利用している理由を一概に判断することはできません。長時間の利用が必要な人もいます。
ただ、もし休憩やゲームなど、ほかの場所でもできることを理由に長時間占有してしまうと、ほかに利用できるトイレがなく、必要な設備を使わなければならない人が困る場合があります。
多目的トイレは、誰かが利用してはいけない場所ではありません。
大切なのは、自分にとっては使いやすいトイレであっても、そこを必要としている人にとっては、ほかに代わりがない場合があると知っておくことです。
多目的トイレを利用するときに意識したいこと
多目的トイレを必要としている人が安心して利用できるよう、私たちにもできる配慮があります。
必要な設備を使う人がいることを意識する
多目的トイレを必要とする人の中には、一般的なトイレでは排泄や介助が難しい人もいます。
見た目だけでは、どのような設備が必要なのか分からないこともあります。
そのため、利用している人を外見だけで判断したり、利用理由を問いただしたりするのは避けましょう。
必要以上に長時間利用しない
多目的トイレを利用する際は、必要な用事が済んだら次の人に譲れるように意識することも大切です。
もちろん、排泄や着替え、装具の管理、介助などに時間がかかる場合もあります。必要なケアを急がせるという意味ではありません。
自分が利用する必要性と、ほかにも利用を待っている人がいる可能性の両方を意識し、必要のない長時間の占有を避けることが大切です。
トイレの設備をきれいに使う
手すりや洗浄設備、ベッドなどは、次に利用する人にとっても大切なものです。
使用後は設備を元の状態に戻し、次の人が安心して使えるように心がけましょう。
外出前に設備を確認する
多目的トイレによって、設置されている設備は異なります。
大きなベッドが必要な人や、オストメイト対応設備を必要とする人などは、目的地のウェブサイトや施設案内で設備を確認しておくと安心です。
自分には必要なくても、誰かにとっては欠かせない場所
多目的トイレは、普段の生活の中では、あまり意識することのない設備かもしれません。
また、一般的なトイレが混雑していたり、使いにくかったりすると、多目的トイレを利用したくなることもあるでしょう。
しかし、そのトイレでなければ排泄や必要な介助が難しい人がいます。
トイレに行きたいとすぐに伝えることが難しい人や、いつもと違う場所では安心して利用できない人もいます。支援者が声を掛けながら外出していても、トイレの空き状況によって対応に困ることもあります。
多目的トイレを必要とする人は、私たちが日常生活の中で出会う機会が少ないかもしれません。
それでも、自分には必要のない設備であっても、誰かにとっては、それがなければ安心して外出することさえ難しくなる大切な場所であるということを、知っていただきたいと思います。
利用すること自体が問題なのではありません。
必要な設備を必要としている人がいることを理解し、譲り合いや適切な利用を心がけること。それが、誰もが安心して外出できる社会につながるのではないでしょうか。
彩(irodori)から
私たち訪問介護事業所 彩(irodori)は、豊中市を中心に、池田市・箕面市などの地域でも、障がい福祉サービスや移動支援を通じて、一人ひとりの生活や外出を支えています。
外出支援では、目的地までの移動だけでなく、休憩場所やトイレなど、安心して過ごすための環境を考えることも大切です。
利用者さんが安心して外出を楽しみ、自分らしく地域で暮らせるように。
これからも、支援の現場で感じたことや、障がい福祉に関する情報を発信しながら、さまざまな人の暮らしについて考えるきっかけをつくっていきたいと思います。
